金融機関の融資動向

経営者保証に関するガイドラインの推進

概要

1.経営者保証に依存しない融資の一層の促進(ただし対象企業が下記条件を満たす場合)

  • 法人と経営者との関係の明確な区分・分離
  • 財務基盤の強化
  • 財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保

2.経営者保証を契約する際の、債権者の対応(保証契約の必要性に関する丁寧かつ具体的な説明と、適切な保証金額の設定)

3.既存の保証契約の適切な見直し

4.保証債務の整理

 

このガイドラインは、中小企業団体及び金融機関団体共通の自主的なルールとして定められたもので、2014年2月より 適用開始となっています。法的な拘束力はないものの、中小企業・経営者・金融機関が自発的に尊重し、遵守されることが期待されています。また、日本再興戦略「改訂2015」(平成27年6月30日閣議決定)の金融庁関連の主要施策の中では、「経営者保証に関するガイドラインの一層の活用等の促進を図る」ことが明記されており、2015年11月、2016年2月には、金融庁から金融機関に対して、中小企業等の顧客への積極的なガイドラインの周知が改めて要請されています。

(2016年5月、金融庁公表「地域金融機関に期待される役割」より)

「金融モニタリング基本方針」(事業性評価融資の推進)

事業性評価融資とは

事業性評価融資とは

「財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の内容や成長可能性などを適切に評価し、融資を行うこと」をいいます。

2014年6月に閣議決定された「日本再興戦略(安倍内閣が掲げる成長戦略)」の、地域活性化・中小企業等の革新政策のひとつとして、「地域金融機関等による事業性を評価する融資の促進等」が盛り込まれました。

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【以下、本文抜粋】

<地域金融機関等による事業性を評価する融資の促進等>
企業の経営改善や事業再生を促進する観点から、金融機関が保証や担保等に必要以上に依存することなく、企業の財務面だけでなく、企業の持続可能性を含む事業性を重視した融資や、関係者の連携による融資先の経営改善・生産性向上・体質強化支援等の取組が十分なされるよう、また、保証や担保を付した融資についても融資先の経営改善支援等に努めるよう、監督方針や金融モニタリング基本方針等の適切な運用を図る。
また、この閣議決定により、金融庁の「平成26事務年度 金融モニタリング基本方針(2014年9月11日公表)」に於いても、「事業性評価に基づく融資等」が盛り込まれています。

【以下、本文抜粋】

<事業性評価に基づく融資等>
金融機関は、財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の内容や成長可能性などを適切に評価し(「事業性評価」)、融資や助言を行い、企業や産業の成長を支援していくことが求められる。
また、中小企業に対しては、引き続き、きめ細かく対応し、円滑な資金供給等に努めることが求められている。金融庁としては、この面での金融機関の経営姿勢、企業の事業性評価への取組み、企業に対し現実にいかなる対応を行っているか等につき、検証を行っていく。
さらに2015年7月に作成された、「円滑な資金供給の促進に向けて」という金融庁が事業者に向けたパンフレットにおいても、「金融機関に対し、事業者の事業の内容や成長可能性などを適切に評価し、融資や助言を行うよう促しています。」としたうえで、「金融機関が目利き能力を発揮して、融資や助言を行い、企業や産業の成長を支援することは、金融機関の果たすべき基本的な役割です。金融庁では、金融機関がこうした役割をしっかりと果たすよう、事業性評価に基づく融資等を促しています。」と記されています。

「金融仲介機能のベンチマーク(指標)」の策定・公表

金融機関の自己点検・評価、開示、対話のツールとして

金融庁は2016年9月15日に、金融仲介機能の発揮状況を客観的に評価できる多様な指標「金融仲介機能のベンチマーク」を策定・公表しました。なお、ベンチマークの具体的項目については、全ての金融機関が金融仲介の取組みの進捗状況や課題等を客観的に評価するために活用可能な「共通ベンチマーク」と、各金融機関が自身の事業戦略やビジネスモデル等を踏まえて選択できる「選択ベンチマーク」を提示しています。

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「共通ベンチマーク」【以下、文章抜粋】
(1)取引先企業の経営改善や成長力の強化
1.金融機関がメインバンク(融資残高1位)として取引を行っている企業のうち、経営指標(売上・営業利益率・労働生産性等)の改善や就業者数の増加が見られた先数(先数はグループベース。以下断りがなければ同じ)、及び、同先に対する融資額の推移

(2)取引先企業の抜本的事業再生等による生産性の向上
2.金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
3.金融機関が関与した創業、第二創業の件数
4.ライフステージ別の与信先数、及び、融資額(先数単体ベース)

(3)担保・保証依存の融資姿勢からの転換
5.金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、 全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)
注目すべきは、ここにおいても「事業性評価融資」を行っている融資先の数を、わざわざ金融機関の指標として掲げていることです。さらに、金融庁は、金融仲介機能の改善に向けて、以下の見解を公表しています。

【以下、文章抜粋】
金融機関が、取引先企業の事業の実態をよく理解し、融資やコンサルティングに取り組むことによりそのニーズや課題に適切に応えていくことは、企業の価値向上や生産性向上を通じて我が国経済の持続的成長につながるとともに、金融機関自身の経営の安定にも寄与するものである。金融機関においては、ベンチマークの趣旨や目的をよく理解し、企業の価値向上等に資する金融仲介の取組みの実績を着実に上げていくことを期待している。
金融庁が策定・公表したベンチマークについて、上記の様に述べていることから、金融機関は今後、このベンチマークに沿った融資(取引先企業に対する事業性評価や、経営支援等に基づく融資)方針に、変わってくることが予想されます。